2018/10/15 鈴木邦男

「やまゆり園事件」を考える
(今回で連載1000回目になります)

10/8(月)やまゆり園事件について
10/8(月)やまゆり園事件について
ロフトは満員でした ロフトは満員でした

10月8日(月)、新宿のロフトプラスワンに行きました。それも昼間です。まだ眠くてボーッとしている時間でしたが、ロフトに来るとシャキッとしました。

この日は月刊『創』プレゼンツのトークライブで、「やまゆり園事件」を考える。月刊『創』編集長の篠田さんと精神科医の香山リカさんも次々と話します。事件の全体像もこれで分かりました。

さらに「関係者」も呼んでます。以前、「やまゆり園」に勤めていた人も来た。そして、この事件について調べている人たちです。

これは不思議な事件です。知的障害のある人を、そこにかつて勤めていた人間が次々と殺したのです。

抵抗出来なくて、向かってこれないから殺した。そういう面はあるでしょう。誰でもいいから殺した。そんな事件がかなりあります。

多くの人を殺した。どうせ死刑になる。いや、死にたい。でも死ぬ勇気がないから、死刑にしてもらいたい。そのための凶行だ。

同じくロフト 同じくロフト

でも、この犯人は、ちょっと違います。かなり長い間、この犯行を心に決めていたんです。

そして、この病院だからやったのです。本か何かで読んで知的障害者は、何ら国家のためになってない。他人に迷惑をかけているだけだ。いっそ、死んでもらった方がいい。じゃ、オレが殺してやろう。そんな気持ちです。

間違った「愛国心」なんです。国のためにならない人間はオレが殺す。そう思いつめたんでしょう。

これが愛国思想だとか、「優生思想」だとか言われてますが、(たとえ冗談であれ)、人々が口にする考えなんでしょう。彼はモロに信じて実行した。

たとえ、そんな愚かな考えを持っていても、普通ならやれない。又、絶対出来ない。

篠田さんと香山さん 篠田さんと香山さん

ところが彼は、かつて「やまゆり園」にいた。そしてその〈思想〉も一理あると思ったのでしょう。知的障害者はダメだ、と思ったのでしょう。

そういう考え方を持った人をこういう場に入れてはダメなんですね。

でも彼は、勤務中にやりたかった。点滴を外した看護師も同じでしょう。こんな人たちはいなくてもいいと思った。

彼は、やる機会はあったが、勤務中にやったら、すぐに犯人だと分かり捕まるからでしょう。

だから、辞めてから、しばらく経って、夜中に忍び込んだ。かって知ったる病院の中だ。全く抵抗出来ない人たちを次々と殺したのです。酷いですね。

午前4時頃で、最も警備が緩い時間だと言えます。でも、窓ガラスを破り、乱入したのです。

以前、やまゆり園にいた人も発言しました 以前、やまゆり園にいた人も発言しました

病院中の人が起きて、「敵」と闘ったら、凶行を防げたのではないかと思います。でも、出来なかったのですよ。

しかし、無抵抗な人々をよくも次々と刺し殺したものですね。酷い話です。

終わってから、元やまゆり園に勤めていた人に私は聞きました。

どうして彼を取り押さえることが出来なかったのか。又、殺された人と生き残った人の差はどこにあったのかと。詳しく話してくれました。

これからは、病院に入る時は、どこから「敵」が襲って来るか分からない。だから、防衛を考えないといけない。まさか、そんなことはないかと思いますが、本当にそんなことも考える時代になるかも知れません。そんな話もしました。

これは私どもも真剣に考える必要があると思いました。

この日は月曜ですが、満員でした。昼の1時から始まりましたが、12時頃から入れて、すぐに満員でした。皆、関心を持っていたんですね。だから皆、来たのでしょう。

篠田さん、香山さんの話も、実に詳しいし、分かりやすかったです。

どうして犯人は凶行に走ったのか。なぜ、誰も止められなかったのか、などについても話してくれました。会場もシーンと水を打ったように静かになって、聞いていました。

こうした問題は、これからも、いろんな所で起きるのかも知れません。

「いらない人間だ」「国に迷惑をかける人間は非国民だ!」と思った人間は多分、〈愛国心〉や〈正義感〉で凶行を行ったつもりでしょう。

しかし、それがまず間違いですね。「愛のない愛国心」であり、間違った「正義感」なんですね。

多分、これからも、こうした考え違いをする人間は多く出るでしょう。それが心配です。

この日はロフトで午後1時から5時まで、ビッチリトークを聞きました。一人として帰る人はいませんでした。

終わってから、登壇者に私は質問しました。又、マスコミの人に私の方も取材されました。中身の濃い集まりでした。

レーニン事務所で映画を観る
レーニン事務所で映画を観る

そのあと、レーニン事務所に行って映画を観ました。昔、観ていますが、忘れていた映画です。

大正時代の大逆事件の映画です。皇太子さまを殺そうとしていた、朴烈と金子文子の物語です。

昔、右翼青年だった私は、この話は知ってましたが、国賊であり、許せない連中だと思ってました。激怒してました。

その後、この人たちについて本を読むこともなく、調べることもなく、過ごしました。

ところがこの映画を観て、大逆事件についての考えが変わりましたね。

朴烈についても、朝鮮人ではあるが、熱烈な民族主義者ですよ。ゲッ、オレはまだ民族主義者だと思っていたが、「もう左翼になった」「転向した」と、言われてるんだ。

私は今もそう思ってないですが、朴烈の(朝鮮民族であるが)強い民族主義に心打たれたんです。

オレたちも民族主義者だからと思ったんです。「敵」だと思っていた朴烈に民族主義を教えられたのです。

そして凄い人だ、そんなに主義に忠実な人だったのだ、と思いました。個人の考え方もいろいろです。〈愛国心〉〈正義感〉は、やはりそれだけでは危ないと思いますし、又、国際時代には誤解される要素になる。

それから、ナショナリズムも論争されるような時代になると思います。キチンと考えてみたいと思っています。

そこでこれからは、じっくりと考えて、いつか一冊の本にして出したいと思っています。

今年は体調を崩して全く本を書いていません。何も考えていないのと同じです。

だから、今年のテーマにしたいと思います。よろしくお願いします。

【だいありー】

講演する佐高信さん
講演する佐高信さん
満員でした。10/10(水)一水会フォーラム
満員でした。10/10(水)一水会フォーラム
講演が終わって。佐高さんと
講演が終わって。佐高さんと
懇親会で
懇親会で
佐高信さん
佐高信さん
木村代表がお礼の挨拶
木村代表がお礼の挨拶
小林興起さん
小林興起さん
  1. 10月8日(月)午前中、原稿。
     12時半。ロフトプラスワン。月刊『創』主催のトークライブを聴きに行く。「相模原障害者殺傷事件の真相に迫る」。『【開けられたパンドラの箱】(創出版)出版記念トーク』だ。
     「創」の篠田編集長。香山リカさん。西角純志さん。岩坂正人さんが出演。事件の様子を初めて聞き、驚いた。迫力のある5時間だった。
  2. 10月9日(火)午前中、原稿。
     午後、図書館。
  3. 10月10日(水)午後、出版社の人と打ち合わせ。
     午後6時、一水会フォーラム。今月から場所が変わった。今まで使っていたサンルートホテルは、ホテルをやめてしまうので、他を探していた。新しい場所でやる。佐高信さんが講師でした。
「読書ゼミ」で読んだ本 「読書ゼミ」で読んだ本
  1. 10月11日(木)河合塾コスモ。
     3時、「現代文要約」。
     5時、「読書ゼミ」。今日は、有馬哲夫の『原爆=私たちは何も知らなかった』(新潮新書)を読みました。
     表紙カバーにはこうこう書かれています。
    〈原爆は米・英・加の共同プロジェクト 投下しなくても戦争は終わった 核拡散は終戦前から予測されていた 常識が根底から覆る衝撃の真実〉。
     とてもいい本でした。とても勉強になりました。
  2. 10月12日(金)午前11時、高田馬場でレーニンさんと待ち合わせ。
     12時半、新宿の出版社に。
     終了後、映画の試写会に行く。よかった。
  3. 10月13日(土)午前10時、新宿で、若松孝二監督をテーマにした新しい映画を観る。そのあと、もう一本、新しい映画をの試写を観た。
  4. 10月14日(日)麻生秀孝さんの主催している格闘技大会「SAW(サブミッション・アーツ・レスリング)」を観に行く。面白い。
     終わって、懇親会に出る。
『創』11月号より
『創』11月号より

【写真説明】

10/8(月)やまゆり園事件について

①10月8日(月)午後1時から。ロフトプラスワンに行きました。月刊『創』プレゼンツのやまゆり園刺殺事件についてのトークがあり、聞きに行きました。『創』の篠田編集長、精神科医の香山リカさんを中心に事件の話をし、やまゆり園に以前、勤めていた人たちを含めてのトークでした。私たちが知らないことも話され、大いに勉強になりました。

ロフトは満員でした

②祝日の昼なのに超満員でした。

同じくロフト

③同じく祝日の昼なのに超満員でした。

篠田さんと香山さん

④篠田さんと香山リカさん。

以前、やまゆり園にいた人も発言しました

⑤以前、やまゆり園で働いていた人たちも報告してました。

レーニン事務所で映画を観る

⑥この日は、終わってから、レーニンさんの事務所で映画を観ました。「朴烈と金子文子」です。なかなかいい映画でした。

講演する佐高信さん

⑦10月10日(水)一水会フォーラム。講師は佐高信さんで、「西郷隆盛について」。熱く語ります。とてもいい講演でした。「平成時代の最高だ」と言う人も。

満員でした。10/10(水)一水会フォーラム

⑧皆、熱心に聴いてます。

講演が終わって。佐高さんと

⑨終わって、佐高さんと。

懇親会で

⑩これは懇親会です。

佐高信さん

⑪佐高さん

木村代表がお礼の挨拶

⑫木村代表が感想を述べてます。

小林興起さん

⑬小林興起さんも感想を述べてます。

「読書ゼミ」で読んだ本

⑭10月11日(木)の河合塾コスモの授業(読書ゼミ)で使った本です。有馬哲夫の『原爆=私たちは何も知らなかった』(新潮新書)。原爆投下事件について詳しく書かれています。必読の書です。

『創』11月号より

⑮月刊『創』の今月号(11月号)を見ていたら、私の写真が載ってました。三田さんと篠田さんと一緒に出てました。

【お知らせ】

  1. 10月18日(木)。午後7時半。ロフトプラスワン。「ひかりの輪」の上祐史浩さんと対談します。
     ロフトの案内にはこう書かれています。
    〈松本智津夫元死刑囚らの死刑執行後、東京初の上祐史浩氏のトークイベント。
    執行前に話題となった元「オウム事件真相究明の会」の鈴木邦男氏が徹底議論!
    さあどうなる!?
    上祐氏だからこそ知る オウム、アレフのこと。全てを語ります〉
  2. 10月27日(土)、28日(日)。富山で合宿。岩井正和さん主催。布清信氏との対談。講演などがあります。参加希望者は岩井さんに電話を。080(5702)8405です。
  3. 11月8日(木)〜11日(日)。三島由紀夫作品上演企画2018。三島由紀夫原作の『殉教』をやります。脚本・高木尋士(オフィス再生)。企画・演出は劇団再生です。会場はAPOCシアター(小田急線千歳船橋駅5分)。日時は、11月8日(木)が19時。9日(金)と10日(土)は、14時と19時。11日(日)は14時開演です。10日(土)の19時からは、プレトークがあります。高木尋士、鶴見直斗、鈴木邦男の3人が三島について語ります。ご期待下さい。
  4. 11月24日(土)。三島由紀夫・森田必勝 両烈士顕彰祭。
    第1部 追悼顕彰祭。
    第2部 特別記念講演。荒谷卓氏(陸上自衛隊特別作戦群初代群長)。
    演題「三島・森田精神を現代に活かすとは」。
     出席希望者は一水会に連絡を。03(3364)2015