大杉栄はアナキストである。そして不屈の革命家である。
でもあまりその人生については知らない。香川県に生まれ、その後、地方を転々とした。
そして関東大震災の時、妻・伊藤野枝らとともに憲兵大尉甘粕正彦に謀殺された。それしか知らない。
でもこの人は大変な人だ。日本の革命家として永く伝えられるべき人だ。
大杉は父親の転勤で全国を回ったが、新潟県新発田市には10年ほどいた。例外的に長くいたのだ。
だから、彼の本を読むと、「新発田が故郷だ」「新発田の空を思うと自由の気分になる」とよく書いている。
その思いに応えるべく、新発田市では10年以上前から、大杉栄を偲び、「大杉栄メモリアル」をやってきた。
松下竜一、森まゆみ、佐高信…と、凄い人たちを呼び、大杉栄についての話を聞いている。
私もこのことを偶然知り、大杉栄の甥っ子の大杉豊さんが講演する時に、聞きに行った。
そしてすっかり感動し、それ以来、毎年のように聞きに来ている。一度は講師で話もした。
私はアナキストではないが、30才の時、竹中労と知り合い、彼から大杉の偉大さを教えられた。「今は右も左もない。左右を弁別すべからざる時だと言ったのだ」と竹中は言った。
又、新発田へ来て、ここで大杉の遊んだ公園や、イチョウの木を見、さらに、住んでいたとこを見た。すっかり参ってしまった。
又、新発田は、1970年に「よど号」をハイジャックして北朝鮮に行った田宮高麿さんの出身地でもある。
又、堀部安兵衛に代表される武士道の町でもある。
そんなことから、すっかり気に入って毎年来ている。
この町の「生涯学習センター」で、毎年「大杉栄メモリアル」をやっている。近くの人、遠くの人も来て、皆で大杉のことを語り合っている。とても勉強になるし、私も多くのことを教えられた。
今年は、絶叫歌人の福島泰樹さん、さらにアナキズム研究をしている作家の栗原康さんが来て、講演してくれた。私も少しだけ、挨拶した。
そして翌日は、田宮高麿さんのお墓参りに行き、38度線の記念モニュメントにも行った。とても勉強になった。
初めて参加した寅次郎君も感動していた。もっともっと多くの人に来てもらいたいと思う。
又、この2日前には、埼玉県浦和市で、面白い集まりがあった。
田中正道さんが主催する「日米地位協定改善を求める47プロジェクト」集会だ。
全国知事会が全会一致でその協定への疑義が出され、政府に申し入れがされた。よくやったものだと思う。
でも、〈日米安保反対〉とか〈安保粉砕〉といったものではない。
日米関係はこのまま保っていていい。ただ地位協定は改善してほしいというのだ。
これは過激な政治的なものではないし、抑えた提言だ。国民全部にも理解してもらおうと思う。
これは、なかなかいい集まりだと思った。私もとても勉強になったし、感動した。
「アメリカをやっつけろ!」「日米安保反対!」と叫ぶのではない。こんな過激なスローガンは叫ばない。もっと理論的に、冷静に日米関係を考えるのだ。これは凄い進歩だと思った。
9月14日(金)の浦和集会、そして9月16日(日)の新発田の「大杉栄メモリアル」。二つとも、とてもいい集まりだったと思う。
こうした、展望のある集まりを、これからもどんどんやってみたらいいと思う。
新発田の集会で講演した栗原さんは、大学の講師をしていて、作家でもある。大杉栄や伊藤野枝など、アナキスト関係の著作が沢山ある。
新発田では新しい著書も売っていたので、私は買って、今、読んでいる。『狂い咲け、フリーダム=アナキズム・アンソロジー=』(ちくま文庫)だ。
これはいい。本の帯にはこう書かれている。
〈アナキスト百花繚乱、一冊まるごと檄文だ!
大杉栄、伊藤野枝、辻潤、中浜哲、朴烈、金子文子から、現代の田中美津、だめ連以降まで。国にも何ものにも縛られない〉
彼の本は、文章も力強いし、他にはこんな著書もある。
『大杉栄伝=永遠のアナキズム』(夜光社)。『村に火をつけ、白痴になれ=伊藤野枝伝』(岩波書店)。『現代暴力論「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)。『死してなお踊れ=一遍上人伝』(河出書房新社)。『菊とギロチン=やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』(タバブックス)。『何ものにも縛られないための政治学=権力の脱構成(KADOKAWA)など。
凄いですね。いいですね。タイトルからして凄い。心して読んで下さい。
絶叫歌人の福島さんも著書が沢山あります。福島さんのお弟子さんの椎野レーニンさんも、ぜひ発表会をやりたいと言ってますが、近いうちにやりたいと思います。
その時は又、沢山の人が集まってくれることを期待します。
①新潟県新発田市の生涯学習センターで又「大杉栄メモリアル2018=言葉とうたで日本の近現代史をふりかえる」。午後1時開始。第1部は栗原康さん(作家)の講演。「米騒動から100年 大杉栄が見た大阪の米騒動」。
⑫館長さんが案内してくれました。「三島の『岬にての物語』は、貸し出していて、ここにないんです」と言ってました。三島は蕗谷に頼んで表紙の挿絵を描いてもらったのです。地方の三島展で頼まれて貸しているそうです。
⑮次に、吉原写真館に行きました。中央が吉原さんです。長く続いた写真館です。大杉栄の子供時代の写真もありました。おもちゃの刀を持って、チャンバラごっこをやっている写真です。〈新発田の歴史〉がここに残ってます。
⑳大杉は、「故郷の自由な空を思い出す」とよく書いてます。又、青空だけでなく、この雲の多い空を思い出していたのでしょう。ここにはとても大きな雲があります。子供時代それを見て、いろいろ想像していたのでしょう。
㉓埼玉県議会議員の浅野目義英(あさのめ・よしひで)さんが挨拶しました。
全国知事会(埼玉県上田清司会長)が2年近くかけて、7月の全国知事会で全会一致で採択しました。これは大きく報じられました。浅野目さんはその状況を詳しく報告してくれました。
㉕最後に鈴木邦男です。この3人の講師を中心にして、会場の皆と一緒に〈日米地位協定〉を考えました。「日米安保破棄」ではなく、それを認めた上での「日米地位協定の改善」を求めたのです。これはいいと思いました。全国民の合意として「改善」されることを願っています。