不思議な本だと思いました。死刑囚が死刑に処せられ、その3週間もしないうちに、それらの本が出版され、世に出たのです。
そんなに早く出来るのか、と驚きました。麻原と同じ日に処刑された中川智正氏です。
この本の帯には、〈「死刑が執行されたら出版してください」と俺は言った〉と大きく書かれている。その通りになった。
でも正確には中川氏の本ではない。中川氏と面会したアメリカ人の大学教授、アンソニー・トゥーという人の本だ。
この人はオウム事件について興味を持ち、中川氏にずっと面会してきた。面会のため、わざわざアメリカから来た学者のために刑務所も無理を聞いたのかと思った。
でも、そうではない。検察の〈意志〉があったのだ。検察・警察としても中川氏は取り調べている。しかし、検察に中川氏は心を許してない。
その点、アメリカの学者になら心を許して話そうとする。という思いもあった。
そこで、検察の特別なはからいで面会は実現した。又、途中で中川氏は死刑囚になった。普通死刑囚は面会が難しい。弁護士と肉親以外は会えない。それなのに、この学者は会えた。検察側の配慮があったからだ。
それに、10分の面会時間なのに、この人は毎回、30分も許可された。勿論、面会の内容は検察、警察にも公表される。それでもいいと思った。
今なら秘密の話はないし、彼を無理矢理刑務所から奪還するなんて考えもない。死刑だって引っ込められない。
ただ、なぜあんな事件を起こしたのか、誰が命令したのか。そこを知りたい。
そんな検察・警察vs弁護側の対立を越えて、誰もが知りたいことだ。謎だ。そこに迫りたい。これは皆の願いでもある。
そういう願いをもって中川氏に毎回30分ずつ面会し、話を聞く。時には対話し、それをまとめて本にする。だから異例づくめの本だ。
こんな形で、本は作れるんだ、と驚いた。
でも、日本人で、こんなことはやれない。大体、検察と話して、こんなことをやれる人はいない。もしいたとしても、日本人だと、徹底的に批判される。「検察のスパイになったのか!」…と言われる。
でも刑は下ったし、今さら、どう響くのか。ただ、皆は知りたい。「謎」について深く掘り下げてほしい。そしてやったのだ。
日本人でなくてよかったのかもしれない。30分以上毎回会って話を聞いた。
これだったら、日本の検察ももっとやり方があると思う。あるいは…と思う。もしかしたら、他にもいろいろあるが、検察が知りたくても喋ってないかもしれない。
だったら、まだまだ「死刑囚」の本が出来るのかもしれない。麻原さんにもぜひ書いてほしかった。
今回の本で興味を持ったのは、その点だ。つまり、検察の「正義」は絶対に破れないし、取引も出来ないと思っていた。
警察が挙げてきた証拠をもとに、検察は筋書きを考える。その考えた筋書きを基に競売を考える。そして検察の「正義」は絶対だ。絶対の正義なんだ、と思っていい。
ところが、どうも違うと言う。それを書いたのがこの本だ。その点で興味深かった。
最近、検察についてもう少し考えることがあった。1本の映画を観たからだ。最近、かなり評判になっている。木村拓哉と二宮和也が主演だ。『検察側の罪人』だ。
2人は検事だ。だが事件をめぐって2人は対立する。木村の立てた筋書きに二宮は承服出来ない。
実際こういうことはあるのだろう。必ず一つの筋書きで全体がまとまるとは思えない。対立や、深謀もある。それが直裁に出ていた。
そうか。対立も必要だ。これは面白い映画だった。日本の監督が検察の中の対立を描いたのは初めてだ。いい映画だと思った。
①週刊「アエラ」(9月10日号)に書きました。アンソニー・トゥー著の『サリン事件死刑囚・中川智正との対談』(KADOKAWA)の書評を書いた。型破りな本だ。凄い本だと思った。中川は7月6日、死刑に処せられた。すぐその20日後、7月26日に、この本は出版された。本の帯にはこう書かれている。
〈「死刑執行されたら出版して下さい」と彼は言った〉。
こんなことが出来るのか、と驚いた。検察側の特別なはからいがあって、この対談は出来た。なぜ出来たのか。その秘密を知るだけでも読む価値はある。
③「サマーセミナー」の感想報告集が送られてきた。こんな大きなイベントをやって大変だったのに、そのアフターケアまでやってくれる。大変だったと思う。凄い人たちだ。そして、マスコミにどう取り上げられたかを送ったくれた。
⑪これはいつでしょう。タイのバンコックに行きました。日本のキックボクサーたちと一緒です。タイのムエタイを見て、ジムに行き、練習しました。もう一度、あの時の強い体にに戻りたいと思って、今、リハビリをしています。