2018/07/09 鈴木邦男

歌丸さんが亡くなった

快楽亭ブラックさん。6/30(土)
快楽亭ブラックさん。6/30(土)
ブラックさんと鈴木のトーク ブラックさんと鈴木のトーク

6月2日、桂歌丸さんが亡くなった。81才だった。

歌丸さんはテレビ「笑点」の5代目司会者として長く務め、古典落語の名手として知られていた。

テレビ、新聞はその功績を讃え、特集していた。その中で産経新聞(7月3日)の「評伝」がひときわ目を引いた。

〈人気におごらず古典芸磨く〉

とタイトルにある。ともかく努力家だったし、勉強家だった。

昭和11年、横浜市生まれ。生家は遊廓だった。なかなかいない。いたとしても、多分、隠しただろう。歌丸さんは後に落語家として大成したからこそ「生家は横浜の遊郭だよ」と言えたのかもしれないが…。

幼い頃から遊女の所作を見、その話し方を耳にして育った。中学生の時にラジオで聞いた落語にのめり込む。

「これしかない」と思った。人間の生き方を伝え、自分を伝えるのはこれしかない。革命的な芸術だと思ったのだ。

満員でした 満員でした

自分の生家、幼い日の思いもあったのだろう。生まれた意味、そして、コンプレックスなども含め、全てを表現出来る世界がここにあると思った。

そして中学3年で5代目古今亭今輔(いますけ)に入門した。今輔は新作落語で知られていたが、歌丸さんは古典志向だ。そして破門になる。

一時的に、化粧品のセールスマンをして働いていた。落語への未練は断ちがたく、三遊亭扇馬(せんば)の取りなしで、兄弟子の桂米丸の弟子となって復帰がかなった。

それから「笑点」のメンバーとなり、パッと芽が出た。そこからが本領が発揮されるところだ。

「評伝」では、こう書いている。

前座のブラ坊さん 前座のブラ坊さん
〈半世紀にわたって人気テレビ番組「笑点」メンバーを務めたが、人気におごることはなかった。「脇役こそが似合っている」と自任し、読書や歌舞伎観劇などで自分を深めながら、埋もれていた噺(はなし)を発掘。自分なりのアレンジを加えて口演した。「毛せん芝居」など歌丸さんでしか聞けない噺も多かった。こうした地道な努力を続け、落語家として本当に開花したのは60歳を過ぎてから。現代では演じる者の少なくなった三遊亭円朝作の「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)」に取り組み始めたころからだ。絶妙の間と噛んで含めるような語り口、さらに独特の色香を発する所作で、円朝の世界を見事に描いてみせた〉

60才からが本番だったんだ。そして円朝に取り組んで長い噺をやる。

病気なのに耐えて、1時間もの長い噺をよくやっていた。たいしたものだ。

円朝といえば、「落語・中興の祖」といわれる。彼の創作落語は多い。今は志の輔さんも取り組んでいる。よくやっている。

終わって、懇親会 終わって、懇親会

今まで「中村仲蔵」を聴いたし、8月には、「牡丹燈籠」をやる。


私も円朝が好きで、「全集」を読んでいる。なかなかいない。

『辞林21』(三省堂)から、円朝を引いてみよう。

〈三遊亭円朝(初世 1839ー1900)落語家。江戸の生まれ。『牡丹灯籠』『真景累ヶ淵』『塩原多助』など芝居噺、怪談噺、人情噺を自作自演〉

大作を自ら書き、作り出し、自ら演じたのだ。これは凄い。

「全集」だって10巻ぐらいある。プロの落語家だって全部読んだ人はめったにいない。これだけは私の自慢だ。志の輔さんやブラックさんも「凄いね」と言ってくれる。

円朝のお墓は谷中の全生庵にある。毎年、追悼のおまつりをやっている。私もよく出ている。

いい本です いい本です

円朝のずっと後の、三遊亭円生という人がいる。この人も、真面目な人だった。

私は学生時代に何度か聴きに行った。CDなどでは出てるので全てを聴くことが出来る。名人だ。大名人・円朝もこんな感じだったのか。そんなことを思わせる。

この円生だが、CDといっても寄席のCDではない。落語家が出してるのは、ほとんど寄席のCDだ。その方が、客の笑い声があり、掛け声がある。ライブ感があっていい。でも円生は、そんな「寄席」が嫌いだった。

変なとこに笑い声を立てられるとムッとする。掛け声だって、場違いなとこにやられたら困る。

そこで、CDは全て、無人のスタジオで録った。そこなら「雑音」が入らない。どうしてもおかしい時に自分で「ウフッ」と笑ったりする。変なとこで笑い声が入ると嫌なのだ。

驚きの本でした 驚きの本でした

つまり、「芸術家」なんですね。大衆の寄席という感じが嫌いなのだ。その孤高の営みもいいと、私は思った。

そういえば、実際の寄席でも、この人の時は、皆、シーンとして真剣に聴いていたよな、と思い出した。

そうだ。快楽亭ブラックさんと話をしたのは、6月30日だ。落語の話を生真面目にやった。ただ、円朝などの話もかなりしていた。又、志の輔さんの落語をよく聴いていて、円朝や円生の落語も「落語」っていうのか、と思った。

これは志の輔さんにも聞いた。「真景累ヶ淵」にしろ「中村仲蔵」にしろ、途中で笑うところはない。話芸と構想力で聴かせる。ゲラゲラ笑わせて聴かせる「落語」という感じでは全くない。

でも「落語」と言うし、「講談」とは言わない。どうしてだろう。このことは、ブラックさんにも聞いてみた。落語家がやると落語だ。講談師がやると講談になる、ということらしい。

それともう一つ、円朝のような話をやる人は、「噺家(はなしか)」と呼ばれていた。なるほど、それは分かる。

10冊、読みましょう! 10冊、読みましょう!

「噺家(はなしか)」か。こっちの方が範囲も広そうだ。「真景累ヶ淵」などは「お笑い」ではなく、「怪談」だ。壮大な「はなし」だ。

それに円朝の落語には、外国のものもある。イギリスやフランスの人たちが大活躍する「噺」だ。これはぜひ聴いてみたい。でも今、誰もやる人がいない。円朝の「全集」で読むしかない。

「円朝全集」は実にいい。角川と岩波で2度出してるのかな。中のしおりのような小冊子に書いてくれと言われて書いた。

いい記念になった、と思う。かなり前だし、又、「全集」だって読み返してみようかな。

それから、円生のCDも聴き直してみようかな。ウォークマンを買って、ランニングをやりながら聴くというのもいいな。体力作りと勉強を兼ねている。と、いろいろ考えている。

【だいありー】

  1. 7月2日(月)原稿。対談。
  2. 7月3日(火)午前中、原稿
  3. 7月4日(水)図書館。
  4. 7/6(金)岡山集会 7/6(金)岡山集会
    1. 7月5日(木)午後から学校。3時、「現代文要約」。
       5時、「読書ゼミ」。この本を読んだ。落合陽一の『日本再興戦略』(幻冬舎)。面白かった。
  5. 7月6日(金)昼の新幹線で岡山に行く。「岡山一水会レコンキスタ読者の集い」。大雨のため中止。せっかく来た人のため我々が話し、皆でトークをする。
  6. 7月7日(土)岡山空港に行き、函館に行く。60年安保の全学連委員長・唐牛健太郎さんの奥さんの追悼祭に出る。
     そのあと、懇親会。函館も雨だし、寒かった。東京で乗り換えて来たが、乗れたのが奇跡のような感じだった。皆に会えて嬉しかった。夜遅くに話す。
  7. 7月8日(日)午後、新幹線で東京に帰る。
週刊「アエラ」7/9号
週刊「アエラ」7/9号

【写真説明】

快楽亭ブラックさん。6/30(土)

①6月30日(土)。午後2時より新宿2丁目で快楽亭ブラックさんの「毒演会」がありました。面白かったです。

ブラックさんと鈴木のトーク

②そのあと、私と時局対談をやりました。「落語の魅力」についてもブラックさんにじっくりと聞いた。そのあと は懇談会。

満員でした

③満員でした。

前座のブラ坊さん

④前座は快楽亭ブラ坊さん。

終わって、懇親会

⑤終わって、懇親会です。 ビールを飲んでます。

週刊「アエラ」7/9号

⑥「週刊アエラ」7月9日号。私の書評が載ってます。国松警察庁長官狙撃事件の詳しい報告という『宿命  警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年』 (講談社)を取り上げました。凄い事件でしたし、凄い犯人ですね。驚きました。

7/6(金)岡山集会

⑦「レコンキスタ読者の集い・岡山」です。7月6日、私も行ってきました。岡山の人たちとも久しぶりに会いました。

山本さん、江川さんとトーク。7/28(土)

⑧7月28日(土)は、山本譲司さん(作家)、江川紹子さんと久々の対談です。これが終わって、高木尋士さんと劇団「再生」のプレトークです。

いい本です

⑨これは面白いし、有益な本です。松山真之助さんの『30分の朝読書で人生が変わる』。昔は夜、読んでましたが、今は朝に読書してます。だから、とても役に立ちます。

驚きの本でした

⑩『パチンコに日本人は20年で540兆円使った』。タイトルが凄いですね。でも、こうなると、「ギャンブル依存症」です。病気の日本。病気の日本人ですね。

10冊、読みましょう!

⑪池上彰さんが書いた『世界を変えた10冊の本』。つまり、その10冊は、〈ぜひとも読みなさい〉ということだ。私も大体読んでたので、ホッとしました。「聖書」や「コーラン」などがありました。

【お知らせ】

  1. 7月11日(水)一水会フォーラム。午後6時半。ホテルサンルート高田馬場場。講師:前川喜平さん(前文科省事務次官)。演題:「昨今の騒動の真相に迫る」。
    7、8、9月の一水会フォーラムは同じ場所です。申し込みは電話・FAXで。電話:03(3364)2015。FAX:03(3365)7130。E-Mail:info@issuikai.jp
  2. 7月15日(日)名古屋。「愛知サマーセミナー」に出ます。午前11時から。名古屋市東山区にある椙山女学園大学教育学部A棟2FのA203教室です。
  3. 7月21日(土)大阪。「カレー事件」集会。森達也さんと鈴木がトークをします。大阪弁護士会館で。
山本さん、江川さんとトーク。7/28(土) 山本さん、江川さんとトーク。7/28(土)
  1. 7月28日(土)午後2時。「マガ9学校」。山本譲司さん、江川紹子さん、鈴木邦男でトークがあります。さらにこのあとは、19時から、劇団再生で高木尋士氏と鈴木邦男のトークがあります。そのあと、再生の芝居です。
  2. 8月17日(金)一水会フォーラム。北川正人氏(千代田化工建設株式会社元社長)
    「世界地図の真のとらえ方(仮題)」。
  3. 9月11日(火)一水会フォーラム。講師:田母神俊雄氏。