まさか、又、テントの芝居を観るとは思いませんでした。
6月22日(金)、椎野礼仁さんに誘われて行ったのです。花園神社のとこに建てられているテントでやっている「ユニコン物語」を観たのです。
唐組がやっていた。主演は大鶴義丹さんです。そして、大久保鷹さんです。
テント芝居は学生の頃に、よく観てました。面白かったし、あの頃の学生は、黒テント、紅テント…と、観ていた。
又、寺山修司、唐十郎…などは学生の青春でした。これらの芝居を観ないのでは学生じゃない、とも思われてました。
右派学生であろうと左派学生であろうと、時代の〈真実〉を観なくては、〈運動〉なんてやれないと思われてました。これは当然ですよね。
又、吉本隆明なども皆、読んでましたね。右派学生だからといって、「三島しか読んでない」なんてのはいませんよ。世の中を知らないと思われます。
だから、無理をしても、左派的なものであろうと、時代を映すものは皆、読んでました。
でも、その後、何十年も寺山や唐を見てなかった。テントの芝居も観てなかった。それが椎野さんに誘われて、花園神社に行ったのだ。
勇気を持って行ってみてよかった。当時とは別なものと感じた。
当時は、テントなんて、食えないからやってるんだろうと思っていた。
ホールを借りる金がないから、空き地にテントを作って、人民を集めて見せる、と。
確かに初めはそんな面もあったんでしょう。ゴザを敷いて、地面の固い所に座る。そして、ギュウギュウに詰め込まれる。さらに人民の思いを知る、と。
でも今は違うんですね。テントはかなり金持ちのものです。
テントの中は暖房も冷房も入る。又、中はやけに立派だ。ちゃんとしたイスもあるし、通路や階段も立派だ。こりゃ、下手をしたら、新しい家を建てるよりも高くつくかもしれない。確かにその通りでした。
昔は学生を働かせて、土方をさせてテントを建てたのだ。今はそんなことはない。プロの人々が作っている。トラクターや機械も使っている。学生の労働ではとても建てられない。
それに中に入って驚いた。中央に舞台はあるが、そこからは外へと「自由」なのだ。
テントの幕をあけると、すぐに外になっていて、道があるし、坂もあり、一般の人々が通っている。車やバイクが走ってきて、舞台の上に乗り入れる。舞台は外に続いた〈世界〉なのだ。
これは凄い。舞台は広い世界に通じている。無限に広い場所なのだ。それをふんだんに使って豪華な舞台になっていた。
学生時代は何と、中央の舞台の幕が上がると、ズラリと機動隊が並び、今にも踏み込んでくる状況だった。私も、そんな時に出会ったことがある。芝居なのか、現実なのか分からない。多分、現実なんでしょう。
面白かったし、「あんなこともあったな」と思いながら観ていた。
そのあと、役者たちに紹介された。主演の大鶴義丹さんに会った。この人は唐十郎の息子だ。「30年前、この芝居を初演した時は、父が主役でしたが、今は僕がやってます」と言っていた。まるで歌舞伎役者ですね。いいですね。
娘さんもあとで挨拶していた。一家で来ている。大久保鷹さんも出ていた。この2人がそろうと、芝居に重みがあります。原作は唐十郎さんだが、演出は金守珍さんだ。金さんとは、前に何度か会ったことがあり、「あっ、鈴木さん。いらっしゃい」と声をかけられた。
芝居が終わってから、皆で飲んだ。月蝕歌劇団の高取英さんも来ていた。現代芝居は皆、寺山修司や唐十郎の流れを継いでいる。僕らも、それをずっと見てきた。
私は、学生時代からこの2人の芝居はかなり観てきたし、本も読んできた。又、数年前には青森にある寺山修司記念館にも行ってきた。かなり不便で、遠かったが、立派な建物だ。学芸員の人にいろいろと聞いた。
「なぜ寺山氏には全集がないんですか」と。「全集」があった方が助かる。「何巻まで読んだ」と分かる。それで集中度が分かる。学芸員が言うには分野が広すぎて、全集は出来ない、と言う。これからも「全集」にする気はないらしい。でも、多くの分野で書きながら、「全集」を出している作家は多い。
変だな、と思いながら、記念館をずっと見た。そして分かった。「あっそうか!」と。
たとえば、小説、詩、脚本…だけなら、いくらあっても「全集」は作られる。
しかし、それが「趣味」の世界に入ると、難しい。寺山は、実は龍馬ずきだった。その小説、エッセーも書いている。
実は龍馬小説だけでも10冊以上ある。それらも「全集」の中に入れてしまうと、私は「全集」を読めるかどうか分からないし、読めないと思う。
だから「全集」はない方がいいのかもしれない。
この時は、他にもいろいろ行った。「キリストまつり」も5年前に行った。
キリストは実は十字架上で死んだのではなかった。逃げ出し、日本に亡命した。そこで一生を終えたという伝説がある。
その伝説に基づいて、キリストのお墓があるし、十字架もある。又、年に一度、「キリストまつり」という追悼祭も行われている。青森県はいろんな不思議なものがある。
そうだ。石川県には「モーゼの墓」があると聞いて、行ってみた。岩井さんの車で行った。でも山の頂上だし、歩いてたら、「クマに注意!」と書かれていた。
青森でピラミッドも見に行った時も、「クマに注意!」と書かれていた。「これ以上来ないでくれ!」ということらしい。そこまでにはこんな所が沢山ある。でも又、行ってみたいと思った。
そうだ。大鶴義丹さん、大久保鷹さんたちとビールを飲んだ。この時、寺山修司記念館に行った話をした。
他には6月26日(火)に早稲田に行った。白井聡さんと鴻上尚史さんの対談を聞きに行ったのだ。学生で一杯だった。
大鶴さんとは初対面だった。いろいろと話を聞いた。
又、他の劇団の脚本家や作家たちも沢山きていた。ずっと芝居の話をした。私はあまり知らないが、当時のドキドキする話を聞いて、面白かった。
⑯6月25日(月)。六本木ストライプハウスギャラリーで、「桜の森の満開の下」の芝居を観ました。千賀ゆう子企画です。とても感動的で、よかったです。原作は坂口安吾です。私は坂口記念館(新潟市)に何回も行きました。館長の息子さんにも何度も会ってます。