2018/05/14 鈴木邦男

「日本国憲法を踊る」を見た!

①日本の歴史、伝統に肉迫する

笠井叡さんと。5/6(日)
笠井叡さんと。5/6(日)
笠井、高木、富岡さんたちと
笠井、高木、富岡さんたちと
富岡、鈴木、高木、笠井さん 富岡、鈴木、高木、笠井さん

連休最後の日、5月6日(日)の夜に、すごい舞台を観ました。

舞踏です。それも、「日本国憲法を踊る」というものです。演ずるのは、世界的ダンサーの笠井叡さんです。場所は国分寺の「天使館」でした。

「すごい踊りだ」という予感はあったのです。前から笠井さんの踊りは自分の眼で観てみたいと思ってました。

でもこの感動を自分だけで観ては勿体ないと思いました。それで「劇団再生」の高木尋士さんを思い浮かべました。

肉体を使って表現する人間として高木さんは笠井さんのことをよく知っていました。「日本を代表するダンサーですよ」と言います。分からなかったら彼に解説してもらおうと思いました。

全体でミーティング 全体でミーティング

私と笠井さんの出会いも不思議な縁からです。私の書いた天皇論を読んでくれ、「ぜひ会いたい」と言われ、中野のルノアールで会いました。笠井さんの本を出している出版社の社長も一緒でした。

「文学」と「表現」についていろいろと考えさせられました。笠井さんは〈活字〉ではなく肉体を通して理解させる世界があると理解してるからです。

それは私も、少し分かります。我々は、活字になったものを読み、そこから全てを理解しようとする。

しかし、それでは、物事の本当の姿を理解出来ないのかもしれない。肉体を通し、「体感」するものがない。

又、文字が発明され、文字として残されると、それで「安心」して、物事の真の姿、原初の姿が忘れられる危険性もある。それは記憶についても書いてる。

文字がない時は全て頭で、体で覚えた。例えば、平家物語を語った人たちだ。文字はない。体で覚え、それを伝えた。

笠井さんご夫妻を囲んで 笠井さんご夫妻を囲んで

だから、体で覚えたものが伝えられた。今は文字があって書かれているから、それだけを手がかりにしている。

だから、私たちは知らない。文字が発明される前、人々は、どうやって歴史を伝えてきたのかを。笠井さんはそれをやっている。初めて会った時、それを感じた。

今度、古事記に挑戦し、日本の原初の姿を書いてみたい、と言う。その本の推薦文を書いてくれと言われて書いた。

私の文は未熟だ。でも笠井さんは喜んでくれた。そして、その古事記について書いた本を送ってくれた。

驚いた。こんな立派な本があるのかと思った。ものすごく厚い。函に入っている。価格は2万円以上だった。超高級品だ。大作家が出す「豪華本」だ。

それに内容が難しい。「よし、まず高木さんに読んでもらい、解説してもらおう」と思った。

共演の女性陣です 共演の女性陣です

彼は私と違い、すごい読書家だ。私は1年に500冊位しか読んでないが、高木さんは1年に千冊は読む。「読書代行」の仕事もしている。

それに、「踊り」と「芝居」という共通のジャンルを持っている。世の中のことを肉体を通して体現し、それを肉体を使って表現する。それを古代に戻って、古事記に挑戦してるのだ。

高木氏は快諾してくれた。そして、読んでくれた。理解して、説明してくれた。

だから、この笠井さんの踊りも高木さんに見てもらい、笠井さんに紹介しようと思ったのだ。

笠井さんから場所と時間を教えられたが、よく分からない。でも、地図を見て、多分、この辺りだろうと思い、国分寺からタクシーに乗った。

笠井さんの本を持つ高木氏 笠井さんの本を持つ高木氏

あれ、笠井さんの自宅のそばだ。そうしたら小さく「天使館」と書かれた場所があった。

あっ、では、笠井さんの自宅の庭に建てていたのか。初めは「稽古場」だったのだろう。それを小さな劇場にしたのだろう。「内田樹さんのようだな」と思わず、つぶやいた。

内田さんは哲学者で合気道をやる格闘家だ。自宅の庭に合気道道場を作った。そこで合気道を教えている。私もそこで稽古をつけてもらったことがある。

自分が一人で学び、それだけでは満足せずに、他人に教えるために新しい場を作るのだ。

②「天使館」での恍惚の瞬間

こんなに読み込んでます! こんなに読み込んでます!

笠井さんは「天使館」と命名していた。

別に商業ベースの劇場ではないので地図には載ってない。ネットにも出てない。我々が執念で探したのだ。

入ったら、畳の大きな部屋だった。半分を舞台にして区切り、あとの半分は見物席だ。50人も入ると満員だ。

でもその50人の人は本当に幸せだと思った。こんなに素晴らしい踊りを見られたんだし…。私らもそうなのだが。

午後5時半、始まる。驚いた。こんな踊りがあるのか。全く新しい体験だった。

「日本国憲法を踊る」としてるから、今の憲法がいかに素晴らしいか。を表現したものだと思っていた。

私も話しました 私も話しました

ところが、フランス革命から始まる。自由、平等、博愛のフランス革命だ。この理念を継ぐものとして日本では憲法が作られた。

まず、大日本帝国憲法(明治憲法)の話からやる。それだけで長いし、「明治憲法を踊る」で終わるかと思ったら、戦争があり、終戦だ。日本は叩きのめされ、そこから立ち上がり、新しい憲法を作る。

踊りは笠井さんが中心だが、お弟子さんたち4人も踊る。そして朗読の女性もいる。皆、素晴らしい。

又、笠井さんは踊りながら、セリフも言う。セリフ付きの踊りも初めてだ。その踊りがすごい。肉体の表現の限界に挑戦している。

その肉体は、まさに〈日本〉であり、〈憲法〉である。又、〈天皇〉でもある。この憲法がいかに苦難の中から生まれてきたか。それを表現する。

笠井さんご夫妻と 笠井さんご夫妻と

そして、どれだけ理想と希望をもって生まれ、育ち、闘ってきたかを表現する。

飛び上がり、走り、倒れ…。全身を使って表現する。笠井さんはまず〈憲法〉になって、憲法の苦しみ、闘い、愛を表現する。こんな踊りはなかなか、ない。皆、息を殺して見入っていた。

2時間の感動的な舞台だった。まるで憲法の誕生の瞬間に立ち会ったような感動を覚えた。終わって、笠井さんにその感動を伝えた。

終わってから、皆で話し合う会にしたいと言う。舞台を片付け、机が運ばれ、ビールが運ばれて小宴会になる。スタッフ、お客さんも一緒になって、飲み、語る。

富岡幸一郎さんも来ていた。「素晴らしいですね」と言い合った。

富岡幸一郎さん 富岡幸一郎さん

高木氏も感動していた。「笠井さんの本を全部読みました」といった。本には200ヶ位付箋が付けてある。すごい読書家だ。それを見て、少しばかり私は解説してもらっている。

笠井さんの奥さんも出席していた。お弟子さんたちとも、色々と話をした。私も皆の前で話をした。

高木さんを紹介した。「私はまだまだ初心者ですが、これから笠井さんのことを必死で勉強したいと思います」と言った。

ともかく、すごい人に会った。この連休では、初めに、池上さんに会った。4月29日だ。そして、連休最後に笠井さんに会った。

こんなすごい人に会ってる人も珍しいだろう。幸せだと思った。

又、少しずつ理解出来たら、そのところだけでも紹介してみたいと思う。

「週刊金曜日」(4/27号)は憲法特集
「週刊金曜日」(4/27号)は憲法特集
私の発言も出てます
私の発言も出てます

【だいありー】

5/19より、ポレポレ東中野で
5/19より、ポレポレ東中野で
6/16。三島映画とトークがあります
6/16。三島映画とトークがあります
  1. 5月7日(月)12時、木村三浩氏と会う。昼食をご馳走になる。
  2. 5月8日(火)午後1時、春山記念病院。MRI検査。そして「認知症」の権威の先生から詳しい話を聞く。
     「どうも血圧が高いようですね」と言って、下げる薬をもらう。「10日間、血圧を計って記録をつけて下さい。そのあと話しましょう」と言う。
     1万円の血圧計を買う。それから毎日、血圧を計るのか。大変だ。
      家に帰って、寝る。
  3. 5月9日(水)午後2時、取材。
     6時半、一水会フォーラム。7時、講師・孫崎享さんの講演。「日米安保の意義を問う」。大変勉強になりました。
     終わってからも、質問が続いた。
  4. 5月10日(木)河合塾コスモ。
     3時、「現代文要約」。
     5時、「読書ゼミ」。今日読んだ本は、一田和樹、江添佳代子の「犯罪『事前』捜査」(角川新書)。すごい本だった。〈日本の近い未来を今、FBIが可視化している〉と書かれていた。恐ろしい。
     こんな「事前」捜査が大っぴらに行われるのか。すでにアメリカでは実際に行われている。かなり熱心に読みました。
  5. 5月11日(金)午後から雑誌の対談。
     帰って、寝てた。
  6. 5月12日(土)午前7時50分に迎えの車が来て、クレヨンハウスに行く。9時から、青山のクレヨンハウスB1レストランで。「原発とエネルギーを考える」について講演。司会は落合恵子さん。
     久しぶりだ。楽しかったし、有意義な勉強になった。
     このあと、昼食会。
  7. 5月13日(日)12時からMXテレビに出る。宇都宮弁護士、呉智英さん、ブラックさんなども一緒だ。テーマは「死刑について」など。司会は堀潤さん。
     終わって、ブラックさんと飲む。
「日刊ゲンダイ」5/11号に出ました
「日刊ゲンダイ」5/11号に出ました

【写真説明】

笠井叡さんと。5/6(日)

①5月6日。国分寺駅からタクシーで5分。「天使館」で笠井叡さんの革命的な踊りを観ました。題して、「日本国憲法を踊る」。実に感動的でした。終わって、笠井さんと。

笠井、高木、富岡さんたちと

②笠井さんを囲んで。劇団「再生」の高木さんにも観てもらいました。富岡幸一郎さんも来てました。

富岡、鈴木、高木、笠井さん

③高木さん、富岡さんも真剣に笠井さんと話していました。

全体でミーティング

④スタッフが集まって、ミーティングです。

笠井さんご夫妻を囲んで

⑤笠井さんご夫妻を囲んで記念撮影です。

共演の女性陣です

⑥「日本国憲法を踊る」で横にいて朗読してくれた女性です。素晴らしかったです。

笠井さんの本を持つ高木氏

⑦笠井さんの本を高木さんが持ってました。随分厚いし、難解です。

こんなに読み込んでます!

⑧こんなに付箋を挟んで精読したんですね。そのあと私に解説してくれました。笠井さんも感動してました。

私も話しました

⑨皆が集まった時、私も話しました。笠井さんとの出会いから、会ったあとの感動、感想などを…。

笠井さんご夫妻と

⑩笠井さんご夫妻と。笠井さんは実は私と同じ歳です。でも、あれだけの激しい踊りをやるんです。

富岡幸一郎さん

⑪富岡さんが観に来てたのにはビックリしました。「日本国憲法を踊る」も前に観たそうです。富岡さんが館長を務める鎌倉の文学館にも笠井さんは来てくれたと言ってました。

「週刊金曜日」(4/27号)は憲法特集

⑫「週刊金曜日」(4月27日号)は憲法特集でした。〈憲法は生きている〉。なかなか充実してます。

私の発言も出てます

⑬この中で私も発言してます。麻布高校で私は前に憲法の話をしました。この時、「金曜日」の記者も来ていて、その時の発言を紹介してました。

5/19より、ポレポレ東中野で

⑭前にこのブログで紹介しましたが、映画「まぶいぐみ ニューカレドニア引き裂かれた移民史」は素晴らしい映画でした。沖縄から大量に移民として行ってます。その人々の苦労、望郷がよく出てました。私は試写会を観たのですが、5月19日から東中野のポレポレ東中野で上映です。私は家が近いので、又、もう一度、観に行ってみるつもりです。

6/16。三島映画とトークがあります

⑮6月16日(水)。午後5時より、三島由紀夫の映画とそれについてのトークがあります。主催するのは三島研究家の瀧沢亜希子さんです。会場は西神田の「学び舎」です。tel 03(3239)1906。私も観たことのない三島の珍しい映画が上映されます。「不道徳教育講座」です。私もとても楽しみです。
 1959年日活で、西河克己監督、音楽は黛敏郎です。上映後、椎根和さん(編集者)と私の対談があります。それも楽しみです。司会は瀧沢亜希子さんです。映画は17時から18時30分。文学対談は18時30分から20時10分の予定です。料金は1千円です。

「日刊ゲンダイ」5/11号に出ました

⑯「日刊ゲンダイ」(5月11日号)に大きく出てました。私のインタビューです。「注目の人に直撃」。〈「私は愛国者」「国のため」と声高に言う人は偽物だと思います〉と断言してます。〈本当に自信があれば謙虚になれるはず〉と。
 そして、「自由のない自主憲法より自由のある押し付け憲法」。「歴史を学ばず反省がないから戦前に戻ろうとする」と言ってます。かなり勇気のある発言ですね。「日刊ゲンダイ」はすごいですね。こんな発言を大々的に取り上げて紹介しています。

【お知らせ】

  1. 6月5日(火)午後6時。一水会フォーラムホテルサンルート高田馬場。講師は樋田毅さん(ジャーナリスト、元朝日新聞記者)。今年2月、『記者襲撃・赤報隊事件30年の真実』を出版。演題「新聞社襲撃 謎の赤報隊に迫る(仮題)」。
  2. 6月12日(火)「地域・民衆ジャーナリズム賞=「むのたけじ」と共に=」の創設の集い。プレスセンター。武野大策さん他。又、鈴木も「呼びかけ人」の1人として出席します。
  3. 7月11日(水)一水会フォーラム。午後6時半。ホテルサンルート高田馬場場。講師:前川喜平さん(前文科省事務次官)。演題:「昨今の騒動の真相に迫る」。 5、6、7月の一水会フォーラムは同じ場所です。申し込みは電話・FAXで。電話:03(3364)2015。FAX:03(3365)7130。E-Mail:info@issuikai.jp