〈若松孝二生誕80年〉のイベントが行われた。そこで、「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」を見た。多分、7回目くらいだろう。
「私なんて34回目です」と言う人もいた。熱烈なファンだ。音を消しても、セリフを言えるのだろう。
三島、連赤、日本赤軍…の映画、そして過去に監督が撮ったピンク映画も沢山上映された。
さらに、驚きの企画があった。連合赤軍の芝居が上演されたのだ。
新宿の地下ホールで、同じ高さで、観客は見ている。
その中で、「総括」が行われる。そして仲間の処刑だ。
鬼気迫る。我々のすぐ目の前で行われる。
我々だって、いつ襲われるか分からない。そんな怖さがある。一緒に「体験」しているような気になる。
この芝居の監督をした白井圭太さんに会った。話をした。いくつか新聞などにも取り上げられていた。
芝居は3月10日(金)に見た。3月11日(土)は、朝から三島事件の映画を見る。
映画が終わって、満島真之介さんが話していた。驚いたが、うまい。
「森田必勝」役を演じた時の覚悟などについて話す。撮影中に、監督にいじめられて、時には〈殺意〉すら覚えたという。
そして、命がけの演技が受け、その後は、テレビCMや電車の広告などにも出てるし、ビッグな俳優になった。
そして、3月14日(火)。久しぶりの札幌時計台だった。今回で21回目だ。
第1回は鈴木宗男さんだった。今回は21回目で、不思議なことに、今回のゲストは鈴木亜繪美さんだ。又もや、鈴木さんだ。
今までは政治家、学者などと話し合った。
ところが今回は、私はゲストだという。聞き手は作家の鈴木亜繪美さんだ。柏艪舎から出た私の本『これからどこへ向かうのか』をテキストにして質問された。
翌、3月15日(水)。昼の飛行機で家に帰って、さあ仕事をしようと思ってたら、宅急便だ。
開けてビックリだった。保阪正康さんとの対談本だ。3月15日(水)に全国一斉発売だ。今年3冊目だ。嬉しい。
3冊目の本は、『昭和維新史との対話』だ。サブタイトルは「検証 五・一五事件から三島事件まで」。
本のカバーには、こう書かれている。
〈思想と国家改造運動を通じ日本を変えようとした昭和史の軌跡を二人の碩学が熱く語り合う〉。
驚いた。「碩学(せきがく)」なんて言われたことは初めてだ。「学問が広く深いこと」を碩学という。
保阪さんは言えるが私は違う。それでも、昔はよく本を読んだが、最近は〆切近くなると、必死でやっている。
そうだ。保阪さんとの本の帯には、さらにこう書かれている。
〈北一輝、大川周明、橘孝三郎、磯部浅一、石原莞爾。そして三島由紀夫。貧困と格差、愛郷と愛国、戦争と革命をめぐり、彼等はどう思索し、行動したのか!〉
昭和維新運動について今まで随分と本を出したが、「昭和維新運動」について対談したのは初めてだ。
単著ではあと、『証言 昭和維新運動』だ。
それが、かなり時間が経ってから、、題名を変えて、再刊された。『BEKIRAの淵から 証言・昭和維新運動』だ。血盟団事件、5.15事件、2.26事件の関係者たちに直接話を聞いたのだ。
そうだ。この本に関して、驚きの体験があった。
この前日、3月14日(火)。札幌時計台ホールだ。6時から始まるが、その直前だった。「初めまして」と一人の男性に声をかけられた。
誰だろう。知らない人だ。「実は、私は嶋野三郎さんのもとでロシア語を勉強してたんです」と言う。
エッ?と思った。嶋野三郎さんは、『証言・昭和維新運動』の中で会ってる人だ。最初に出てくる人だ。「老壮会」のところだ。ロシア革命を実際に見た人だ。
そして、日本に帰って来てからは全国で講演した。
そのあと、北一輝の秘書になり、運動を体験してきた。
この嶋野さんの話を聞いて、北一輝への見方が変わった。信仰的な人で、天皇への思いは強く、その思想は純で広く、まるでゲーテのような人だったという。
夢中で話を聞いた。その嶋野さんが、東京のニコライ学院でロシア語を教えていたという。そして、この人は通っていたという。
何かの機会に私が嶋野さんにインタビューしたということを知り、この『証言・昭和維新運動』を知った。
そして、札幌時計台で話をすると聞いて、駆けつけてくれた。
嬉しかったですね。懐かしかった。昔の活動家の人たちは皆、思想があった。哲学があった。
保阪さんは橘孝三郎に長い間、通い詰めて取材をした。橘は厚い天皇論を4冊も書いているし、英文で天皇論も書いている。ものすごい大学者であり、大思想家だ。ある時、こう言われた。「君の質問は一方的だ。次の取材に来るまでに、ベルグソンを読みなさい。それから私に質問をしなさい」と。
すごいね。「ベルグソンを読みなさい」か。
その他、いろんなアドバイスをされたという。「命をかけて運動をした」というだけではない。深い思想、哲学があるのだ。
北、大川、橘…と、皆、思想家だし、哲学者だ。
そんな人たちの本を出せたのは幸せだ。又、それらの人々について保阪さんと対談できたのも幸せだった。
時には難解な話にもなった。でも、構わず続けた。簡単に、話を「分かりやすく」はしなかった。
橘のような大学者が、それでもなぜ、5.15事件に決起したのか。そうした点もかなり詳しく聞いた。さらに、三島事件についても。
一つ一つの事件について保阪さんは厖大な取材を重ねて、本を書いている。その上で、事件の真相に迫る。
保阪さんについては又、書いてみよう。
今週は、この対談本の目次だけを紹介しよう。
保阪正康・鈴木邦男『昭和維新史との対話』=検証 五・一五事件から三島事件まで=(現代書館)
まえがき 鈴木邦男
第1章 国家改造運動の群像
第2章 5.15事件と農本主義
第3章 軍事学なき〈軍人天国〉
第4章 未完の国家改造運動と日米開戦
第5章 戦後の革命家たち
第6章 国家改造運動の残したもの
あとがき 保阪正康
少々難解かもしれない。頑張って話し合った。又、いわゆる「右翼運動」には何が欠けていたのか。そんなことも話をした。
「軍事学なき〈軍人天国〉」の話は、頭をガーンと殴られた感じだった。
軍に対し、いろいろ批判はあるが、国を守るために戦っているのだ。国のために命をかけているのだ。だから、どうしても批判できない。
いろいろあっても、「でも命をかけて日本を守っている」と許してしまう。その点が甘かったのだろう。
それは〈日本〉についても言える。
日本のために頑張っている。だから、いい人だろう。と、ここまで認め、許してしまう。
でも日本の学校に〈軍事学〉はなかったし、保阪さんは言う。
これなども全く知らなかった。「命かけてるから」「国のために体をかけてるのだから」と、認めてしまう。それが危ないんだと、保阪さんは言う。
保阪さんとは昔から知っている。40年以上も前からだ。
でも、キチンと話したことは今回が初めてだ。圧倒された。
何千人という人々への取材。資料を読み、その上での確信。
そして、何が足りなかったのか、何が悪かったのかを指摘する。
右翼の問題だって、中にいると、問題点が分からない。中から批判などができない。
その点、保阪さんは、外から、問題点を指摘し、批判すべき点は批判する。
それはありがたかった。我々の全く気づかなかったことだ。反省の視点が欠けていた。
又、何年か経ったら、対談してみたい。本当にお世話になりました。
そして現代書館の菊地さん、吉田さん、とてもお世話になりました。
では又、来週。
鈴木亜繪美さんが、「鈴木邦男を裸にしてやる」「知らなかった鈴木を見せつける」と張り切っている。司会の中尾則幸さんも張り切っている。私は防戦一方だった。
でも、知らなかった面も出たらしく、好評でした。
終わって、打ち上げ。
この日は、ロフトで青木理さんのイベントがある。BS朝日の「連合赤軍」の時もお世話になったので、お礼を言おうと思って聞きに行きました。
第一部は上西小百合さんが出ていて面白かった。でも、一部だけで帰った。
私は見つかり、「あっ、ちょっとだけ」と青木さんに、壇上に上げられました。青木さんと『安倍三代』の話をしました。
ゲストは朝日の浜田さん。元SEALDsの奥田君。奥田君のお父さんはキリスト教の牧師さんです。だから奥田君の名前は「愛基」です。「キリストを愛す」です。「私も高校はミッションだったんで、一緒にキリスト教の話をしましょう」と言いました。
じゃ、行ってみようと、歩いたら、けっこう遠い。やっと着いて展望台に昇りましたよ。眺めはいい。写真も撮ってくれました。
そして、そこで食事をしてから、河合塾コスモへ。
午後5時から吉田先生との合同ゼミ。「国家と個人について」。かなり難しい話になりました。国家の自立と個人の自由。そして、個人の人権権利、憲法は改正するべきか。といった話をしました。
終わって、吉田先生、フェローと近くの居酒屋で食事をしました。
⑨鈴木亜繪美さん。亜繪美さんは、「楯の会」のその後を書いた『火群(ほむら)のゆくへ』(柏艪舎)を著してます。机の上に置いてます。又、この日のテキスト。私の『これからどこへ向かうのか』(柏艪舎)。それに、柏艪舎社長の山本光伸さんが書いた『私の中の三島由紀夫』(柏艪舎)が置いてます。この山本さんの本はとても勉強になります。いい本です。
⑰3月15日(水)ロフトプラスワン。札幌から帰った夜でしたが、聞きに行きました。青木理さん、奥田愛基さん、浜田敬子さん。〈『安倍三代』とジャーナリズムの現代を語ろう〉。第一部では上西小百合さん(衆議院議員)がおりました。二部では帰ったため、私が壇上に呼ばれました。(左から)鈴木。浜田さん。青木さん。奥田さん。
⑳3月14日(火)札幌に行き、15日(水)に帰って来ました。そうしたら、愛宕警察署から、呼び出しが来てました。3月16日(木)の午前中に行きました。逮捕、取り調べ以外では警察に行ったことはありません。いつも「強制連行」です。自分から行ったことはないのです。
でもこの日は、自分から行きました。「落とし物が届いてる」と言われて。これは「出頭」なのかな。「すみません。赤報隊の犯人は私です」「三億円事件も私です」と「自供」しそうになりました。でも、無事に終わり、外に出たら、東京タワーがありました。
㉓「週刊読書人」(3月10日)に原稿を書きました。斎藤貴男さんの『失われたもの』(みすず書房)の書評です。とてもいい本で、考えさせられました。
〈問題意識の原点がここに=若くしてこの本と出会った人たちは幸せだ〉。