1月14日(土)、第4回「三島由紀夫生誕祭」が行われた。
「生誕祭」も4回を迎え、ますます充実し、集まる人の期待も大きくなっている。
三島といえば、どうしても自決した11月25日が思い出され、追悼、顕彰、偲ぶ会は、その前後に集中している。
それとは別に、三島の誕生日(1月14日)を祝い、歌い、三島にも楽しんでもらおうという集まりがこれだ。
バースディ・ケーキを用意し、バースディを祝う歌をうたう。三島が好きだった歌もたっぷりと歌う。
そして「今、話題になっている〈三島〉」について語る。
三島が生きていたら、何を言うか。又、本や映画などで取り上げられている「三島現象」について皆で語る。
三島由紀夫については誰よりも詳しい椎根和(やまと)さんが出る。
三島の晩年の担当記者だったし、『平凡パンチの三島由紀夫』という第一級の三島研究本の著者である。この人には、いつも教えられている。三島の理解が深いし、日本一だろう。
さらに歌手の横山郁代さんが出る。親がやっているお菓子屋に毎年、三島がマドレーヌを買いに来ていた。
高校生の時の、三島との交遊を書いた『三島由紀夫が来た夏』という著書もある。とても楽しい本だ。女子高生を相手に三島がかなりお茶目な面も見せている。知られざる三島を書いている。
横山さんは今は、歌手であり、三島の好きな歌の数々をうたう。そして、ジャズまでも歌う。それに、本も出す。二人と会い、知られざる三島を教えてもらうのはとても楽しみだ。
それに今年は、作家の西村幸祐氏も出席してくれる。
総合司会は御手洗志帆さんだ。三島については、詳しいし、テレビ局に勤め、三島の特番をやったこともある。
この人たちのトーク。そして横山さんの歌で毎年、進行する。
詰めかけた多くのお客さんからも意見や質問が出る。
自由で、楽しい集まりだ。
又、最近は、元「楯の会」の倉持清氏が参加してくれてる。三島との貴重な話を披露してくれる。
では、今年の「三島由紀夫生誕祭」だ。
1月14日(土)午後6時開場。6時半開始。銀座タクトだ。数寄屋橋からすぐのところだ。素敵なクラブだが、この日だけは、三島のために貸し切りだ。
第1部は6時半からスタート。〈深読み座談会。予言小説!?『美しい星』をめぐって…〉。
今年の5月に三島の小説『美しい星』が映画化され、上映される。予告篇はもう流されている。大きな話題を呼んでいる。
監督は吉田大八。出演は、リリー・フランキー。亀梨和也。橋本愛。中嶋朋子だ。
一見、普通の家族だが、実は異星人だ。それも4人とも出身星が違う。
でも、お世話になったこの美しい星(=地球)の危機と対決し、守ろうとする。迫りくる核戦争から守ろうと、必死になって戦う。
ソ連のフルシチョフに手紙を書いたり、全国で講演会をやったり。さらに、「こんな地球など滅びた方がいい」と言うグループと闘う。
論争のシーンは実に迫力がある。まるで、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の中の「大審問官」のようだ。
一見、ただのSF小説のようだが、違う。実に思想的であり、哲学的だ。
昔、読んだ時は、「UFOなんて…」と思っていた。当時、流行っていたUFOについて三島も面白がって書いてみただけだろう。そう思っていた。
でも違うのだ。もっともっと深い意味がある。そのことについては先週書いた。
椎根さんは、さらにすごいことを言う。三島がこの本を書いた後、アメリカの映画界では、UFOブームが起きる。スピルバーグの「未知との遭遇」、ルーカスの「スターウォーズ」などだ。
私などは、こう思った。やはり三島はすごい。「これからは、UFOブームが来るし、人間が異星人と出会うこともあるだろう」と思った。
その「未来」を予知し、予言したのだ。すごい小説だ。と思ったのだ。
ところが椎根さんの見方は違う。はっきりとした〈証拠〉を持って、こう断言する。
「スピルバーグも、ルーカスも、実は三島の『美しい星』を読んでいたのだ。それで、「異星人との遭遇」のシーンを撮った、と言う。
エッ?ホントかよ、と思った。
でも椎根さんは確証があります、と言う。そして、映画の中の一つ一つのシーンついても説明する。
これは知らなかった。去年の「生誕祭」では、三島の『命売ります』を取り上げた。
三島には珍しく、アクション小説だ。まるで007みたいですね、と言ったら、三島は日本の007を目指していたんだ。日本では珍しいが、スパイ小説、アクション小説に挑戦したのだという。
でも発表当時は、反響は良くなかった。不評だった。「三島らしくない」と言われた。
「もし、あの小説が売れたら、三島はスパイ小説、アクション小説を大量に書いたでしょう」と椎根さんは言う。そして、どんどん映画化される。日本でも007のような小説、映画が量産されるわけだ。
でも、『命売ります』の不評で、そうはならなかった。「その後の三島」を考えると、かえって、これはよかったのかもしれない。大ヒットして、アクション小説に「転向」されては、その後の三島はなかった。
それと同じような、あるいは、それ以上の「転機」になったのが、この『美しい星』だという。アメリカ映画を動かしたのだ。
しかし、日本ではそれほど評価されなかった。三島の死後45年が経ってやっと評価されてきたのだ。5月には映画が上映される。楽しみだ。
そうだ。今月末からは遠藤周作原作の『沈黙』が上映される。PANTAさんも出ている。台湾でロケしてきたという。
信仰や心の内部を取り扱っているし、とても映画化は無理だろう、と言われていたが、映画化される。楽しみだ。
遠藤周作はキリスト教徒であり、宗教問題を正面から扱っている。
それと同時に、軽妙な小説もかなり書いている。そのことによって精神のバランスを取っていたのかもしれない。
遠藤周作も私は随分と読んでいる。次は全集に挑戦してみたい。
では又、「三島生誕祭」の話に戻る。この日は、特別に西村幸祐氏も来て発言してくれた。いろんな媒体で政治的発言をしているし、私も読んでいる。
三島事件の意味について、又、個々の作品についても語ってくれた。又、元「楯の会」の倉持清氏も来て、発言してくれた。
私は、「昨日、美輪明宏さんのコンサートに行き、終わって、話をしてきました」と言ったら、三島さんと美輪さんのことについて、貴重な話をしてくれた。
三島さんの家で新年会をやった時、美輪さんが来た。倉持氏はその隣りに座っていた。だから、あの時の〈事件〉はよく覚えている。
美輪さんが、三島さんの後ろに何か憑いている、と言った。背後霊のようなものだ。
三島は驚いて、美輪さんに聞いた。「それは西郷か?」と。西郷隆盛が憑いているのか、と思った。
「違う」と美輪さんは言う。「じゃ、甘粕か?」。大杉栄を殺した甘粕だ。それも「違う」という。
他にも何人か名前を出し、「磯部か?」と聞いた。その瞬間、三島の後ろの霊が消えた。
「この人だ!」と思って、「そうです」と言った。
美輪さんは別に磯部のことを知っていたわけではない。三島の問いと、それに応じた瞬間、消えた霊のことを言っただけだ。と言う。
でも、こんなことがあって、三島はますます2・26事件にのめり込む。
2・26事件の磯部浅一が憑いている。そう言われて三島はどう思ったか。
「納得していた。満足そうだった」と倉持氏は言う。
では、その時、隣りにいた倉持氏にも霊は見えたのか。今度、会った時に聞いてみよう。倉持氏は貴重な「歴史の証人」だ。じっくりと話を聞いてみたい。
この「三島生誕祭」の翌日、1月15日は高木尋士さんと「読書対談」をやった。かなり集中してやった。そのうち、まとまったら、ここで発表しよう。
私は「月平均30冊読破」は何とか達成してた。でも、高木氏は去年は何と、「500冊」を突破したそうだ。すごい。とてもかなわない。月に何冊読んだか、その報告も近いうちにします。
今回は、これから出る本をちょっと紹介しよう。
2月中旬に、今年の第1冊目が出る。
昨日、表紙とグラビア部分が送られてきた。内田樹さんとの対談本だ。『慨世の遠吠え2=呪いの時代を越えて』(鹿砦社)だ。
表紙には2人の写真が大きく出て、こう書かれている。
〈ともに思想家である内田樹と鈴木邦男が、その頭脳と身体で語り尽くした超「対談」衝撃の第二弾!!〉。
それと、白井聡さん(政治学者)と、かわぐちかいじさん(漫画家)の言葉が大きく書かれている。これはすごい。
「知のストリートファイターが繰り広げる真剣勝負は、混迷の時代に生きるための作法を教えてくれる」(白井聡)
「国際情勢から武道、そしてマンガまで、「知」と「情」で切り拓く新たな地平。お二人の言葉に耳を澄ませると「日本は面白い」と聞こえた」(かわぐちかいじ)
いやー、これは嬉しいですね。本当にありがとうございます。本が出来上がるのが楽しみだ。きっとこれは売れるでしょう。
これが今年の第1弾だ。第2弾は3月1日に出る。私の書き下ろしで、『憲法が危ない』(祥伝社新書)だ。
かなり苦労して書いた。衝撃的な本になるでしょう。
第3弾は、保阪正康さんとの対談本だ。現代書館から出る。日本の近現代史について徹底的に語り合った。
保阪さんは右翼の思想家・橘孝三郎氏を長く取材し、本も書いている。
又、「楯の会」の阿部勉氏らとも親交があったし、三島事件についての著作もある。
さらに、日本の戦中、戦後については第一人者だ。その保阪さんにとっては今の日本はどう映るのか。
どうして、こうなったのか。〈右翼の歴史〉も絡めて話し合った。
3月頃には出来るだろう。それと4弾目は白井聡さんとの対談だ。だから、4冊の刊行が決まっている。
去年の末から今年の正月にかけて、かなり頑張った。その成果がこれから出てくる。
2月、3月は「読書会」もあるし、頑張ってやります。
易しい本だけでなく、いろんな「全集」にも挑戦していきたい。
そして、日本にとってのアメリカとは、について語ってくれた。質問も多かった。
終わって、二次会の席でも、質問が集中していた。
終わって、寅次郎君、平田君と3人で中井の「白雪鮨」に行く。漫画家の赤塚不二夫がよく行っていた店だ。
でも、時間が遅くて、もう閉店していた。又の機会に行こう。
仕方なく、落合のデニーズでコーヒーを飲む。でも寅次郎君は、「ビールとコーヒー」を注文し、一緒に飲んでいる。さらに、イチゴパフェを注文し、食べている。変わった人だ。ウエイトレスさんも、「これでいいんですか?」と不思議に思い、聞き返していた。
この日、「週刊ポスト」(1月27日号)発売。〈ベストセラー『日本会議の研究』を販売差し止めに追い込んだ「○○」〉。「生長の家出身の鈴木氏」がコメントしていた。
①1月14日(土)。「三島由紀夫生誕祭」が行われました。午後6時30分より、銀座タクトで。第1部〈深読み座談会『美しい星』をめぐって〉。左から、鈴木邦男。西村幸祐氏。椎根和氏。横山郁代さん。御手洗志帆さん。