3月17日(木)、午後8時から、ロフトラジオに出た。蓮池透さん、椎野礼仁さん、そして私が出た。
ロフト席亭の平野悠さんが司会で、北朝鮮の拉致問題について蓮池さんに聞く。
蓮池さんは「家族会」の事務局長で、かなり過激な発言をしてきた。
ところが、それでは「拉致問題は解決しない」と発言が変化。「トーンダウンした」と思われた。
そして、「家族会」を辞めた。「辞めさせられた」と言う。
そして政府や家族会、救う会を批判する本を出した。
その本を基に安倍首相に質問した野党議員もいた。それに対し安倍首相は突然にキレて、「どっちの言い分が正しいのか。私が間違っていたらバッジを外す」とまで発言した。
そこまで首相を追いつめた蓮池さんだ。
その真意をロフトラジオでは聞いた。又、なぜ「方向転換」を起こしたのか。蓮池さんの中で何があったのか、を平野さんが突く。
「北を追いつめる」「経済制裁する」と、どんどんエスカレートするが、それが「拉致」問題解決には一切結びつかない。
「対話と圧力」といい、「あらゆる方法をとる」と言いながら、「圧力」だけだ。
これでは、日本国内向けのものだ。ほら見ろよ、こんなに強く北を批判し、追いつめているんだ、と、背後の国民に見せつけているだけだ。その〈声〉が北朝鮮には届いていない。
その点の憂慮が蓮池さんにはあるのだ。どうやって北と話し合いをするのか。その点について具体的に提言する。
「いや、自衛隊を行かせろ」「戦争も辞さずで強硬手段を取れ」と言う人もいる。「対話」なんか必要ない。「圧力」だけだ、と言う。
しかし、それでは問題の解決にならない。
拉致問題について、北朝鮮は再度調整し、その報告書を日本に渡そうとした。
しかし、日本側が拒否しているらしい。絶望的な報告書をもらってしまっては、どうにもならないし。だから受け取りたくないのだと言う。
そんな中で、北朝鮮は「怖い国だ」という印象、思いだけが過大に映る。
又、それを利用して、政府・自民党は、「だから軍備増強だ」「だから憲法改正だ」という方向に誘導している。
北朝鮮は「怖い国」で、「全く話し合いができない国」と思われる方が、政府・自民党にとっては都合がいいのだ。
日本の右傾化、改憲を、まるで北が手助けしているようにさえ見える。
その上で、どうしたら拉致問題が解決するのか。蓮池さんが語る。
とても分かりやすくて、説得力のある話だ。
この時は、北朝鮮の問題が主要なテーマだったが、その中で、安田純平さんの話も出た。
というのは、行方不明で心配されていた安田純平さん(ジャーナリスト)の映像が、初めて公開されたからだ。
「やっぱり、武装勢力に捕まっていたのか」と思った。
安田純平さんは、昨年6月にシリア入りした。その直後から連絡が絶え、心配されていた。
「武装勢力に拘束されているのではないか」という話はあったが、確信のあるものではなかった。
そして、この日、安田さんの映像が初公開されたのだ。
私は安田さんには何度も会っている。一水会フォーラムで講演してもらったこともある。
安田さんはかつて、イラクに行った時も拘束され、人質になった。
その時は無事、解放され、日本に帰ってからも、その時の話をしていた。私も何度も聞いた。
武装勢力の様子だけでなく、一般の国民の様子、気持ちも聞いた。新聞などでは分からなかったことが報告されていた。
拘束されながらも、向こうの状況は的確に見ている。
現地の状況もかなり分かってるはずの安田さんが又、拘束されている。
公開された映像では、髪もヒゲもぼうぼうだ。やつれている。いつもの安田さんではない。
驚いた。まるで別人だった。痩せているし、やつれている。
手元のメモ用紙に視線を落としながら話す。
〈私はジュンペイ・ヤスダです。今日、3月16日は私の誕生日です〉と話し、子供や家族に向けて、〈愛している。いつもみんなのことを考えている。抱きしめたい〉と語る。
又、「私の国に言わなくてはならないことがある」「痛みに苦しんでいるのに、誰も反応してくれない」と言う。
去年から拘束されていたし、今まで何度も日本政府に打診があったと言われている。
しかし政府は否定。たとえあったとしても、前の後藤さんの時と同じく、「テロリストと交渉しない」という姿勢だったのだろう。
又、そんな冷酷な政府の態度に対し、「偉い。テロリストと交渉しないのは立派だ」と政府を持ち上げる国民が多かった。
冷たい国民だ。それで今回も、「無視」する方針なのだろう。
又、「自己責任だ」「危険な所だと知っていながら行ったのだろう」という声も多い。
この日(17日)の夜のテレビでは、どこもこの問題を取り上げていた。
その中でも、「報道ステーション」は異色で、はっきりと主張していた。
古館さんも、木村草太さんも、「一日も早い救出を」と訴えていた。
草太さんはこう言っていた。
「一般の人が観光のために行って人質になったのとは違う。『自己責任』では片付けられない。情報のない所へジャーナリストが行き、そこで報じる。現地に行かなくては分からないことが多い。だから危ない目に遭いながらもジャーナリストは行くのだし、知られないところを知らせようとする。
だから、そこに行くジャーナリストは「宝」です、と草太さんは言う。そこまでズバリと言う。
危険を冒してまで行くジャーナリストは日本の「宝」だ。
又、それを言える古館さんや草太さんも日本の宝だ、と思った。
翌、3月18日(金)の朝刊には、安田さんのことが大々的に出ていた。
でも、うちは産経新聞だから、「安田さん批判」が多いんだろうな、と思った。しかし、それはない。
それに驚いたのは、2面の「主張」だ。〈社説〉に当たるところだ。ここでも「日本人の拘束」について書かれている。
驚いたのは、その見出しだ。何と、こう書かれている。
「政府は解放に全力をつくせ」。
エッ、産経が、と思った。いろいろ事情があるだろうが、まず救出だ。
文中では、安田さんの行動に対し、批判もしているが、その前にまず、解放することだ。そう言う。
その姿勢はいい。政府・自民党は、今回も「一切交渉しない」という方針らしい。
しかし、産経は、それを批判する。そして、「政府は解決に全力をつくせ」と言う。
大体、人間が国家を作り、生活を営むのは何故か。
国・政府は、そのスタート地点から、国民を守る義務がある。イザとなったら、国は国民を救う。
そのために国家を作り、政府を作り、政治家を作るのだ。国民に何かあったら、それを救出するのが国家、政府の仕事だ。
それをやれない国家ならば、そんなものは必要ない。
たとえ、どんな事情であれ、又、その人たちがどんな考え方をしているか。それにも拘わらず、国民が外国で事故にあったら、全力で救出する。それが国のやるべきことだ。
そのために、人々は国家を作っているのだ。自己責任だ。と言ってたら、国家は成り立たない。
批判したり、文句言ったりするのは解放された後でもできる。その時、ゆっくり議論したらいい。
今は、産経新聞が言うように「政府は解放に全力つくせ」だ。
明らかに「世論」も変わってきた。
ちょっと前までは、「自己責任だ」「テロリストと交渉するな」と言う意見が主流だった。
しかし、産経にしろ、報道ステーションにしろ、「救出しろ」の方が多い。
叱ったり、文句言ったりするのは釈放後に、ゆっくりやったらいい。
それに、ここも自由にものが言える空間だ。ロフトラジオのことだ。毎週一度、木曜日の夜、8時からだ。
こうした自由な発言の場があることは貴重だ。産経、報道ステーションもあってよかった。
今、どんどんマスコミは弱体化している。「偏向してる」と言われるのが怖いのだ。
政府を怖れ、どこもかしこも「自主規制」してしまう。それを打破しなければならない。
ジャーナリスト、言論人、一人一人がこの現状をキチンと認識し、命をかけてやるべきだ。報ステなどはよく頑張っている。
税務署の隣りは、中野区役所。知り合いがいたので、行って少し話をする。
一度、家に帰って仕事する。
夕方、出かける。5時半から憲政記念館へ。浜田和幸議員が主宰する会。〈参議院議員 浜田和幸 国際政治経済セミナー〉。
ロシア大使、インド大使を招いて、3人で、今の国際情勢を語る。そして、対立ばかりが言われる中にあって、どうやって平和を作り出すのかを語り合う。途中から、中国公使も参加する。
今時、こうした建設的なセミナーは珍しいし、貴重だ。他国を批判し、敵対心を煽る人々が多い中で、とても貴重だし、勉強になる。これこそが政治家の務めだと思う。
セミナーの第2部は懇親会。中山恭子さん、アントニオ猪木さん、下地幹郎さん、 などが挨拶していた。
第2部は参加者もドッと増えていた。ロシア大使とは恵観さんの新年会で会ったので2回目。「サンボの修行でロシアに3回行きました」という話をしました。
インド大使とは、「デリーからダラムサラに行きました。ダライ・ラマさんに会いに」という話をしました。
デーブ・スペクターさんの奧さんにも久しぶりに会いました。
猪木さんとはピョンヤンでも3回ほど会ってます。北朝鮮に対しては発言権もあるし、又行ってほしいですね。
浜田さんとは、日本の果たすべき役割について話しました。軍隊を増強し、他国を挑発し、そしてアメリカの傭兵になるのではダメだ。世界の国々と話し合いの場を持ち、それをやれるのが日本だ。
こういうセミナーはその点、実に有意義だ。という話をしました。
この本を突破口に、3人の講師が「神なき時代の神秘主義」について話す。バタイユ思想のアクチュアリティを読み解こうと議論を繰り広げる。
又、事前に、大岡先生の本を必死になって読んだ。〈人形芝居『マダム・エドワルダ--君と俺との唯物論--』を突破口に、8人の論客がバタイユの可能性を語るスリリングな対談集!〉と表紙に書かれている。
8人とはこの人たちだ。宇波彰、大澤真幸、片山杜秀、ブブ・ド・ラ・マドレーヌ、仲野麻紀、宮台真司、中条省平。
本当に、スリリングで知的刺激のある対談集だった。〈ファシズムは誘惑する!〉というキャッチ・コピーも、とても深い。
三島由紀夫の話も出てくる。三島が生きてこれを見たら、大喜びしただろうと私は言った。
この人形劇に出てくる「おっ母さんファシズム」には驚いた。まさに今の日本ではないか。健康のこと、日々の安心について、どう平和な生活を送れるかを「おっ母さん」が説く。
その中で、当たり前の日本人、当然の愛国心、常識が植え付けられていく。「日本人だから日本を愛するのは当然だ」と。そんな「おっ母さん」の説教のようなファシズムだ、今の日本は。その話をした。
これは、レベルの高い授業だな、と思った。生徒もついてくる。私もとても勉強になりました。
終わって、高田馬場へ。6時半からサンルート高田馬場。一水会フォーラムだ。
講師は小林興起さん(国民党代表)。演題「対米自立戦線を強化せよ=我々がなぜ独立自尊を掲げるのか=」。
私は30年前からの知り合いだ。小林さんがまだ通産省の官僚だった頃、ある勉強会で知り合いになった。
その時から、政治家になろうと決意し、勉強していた。一貫している。ぶれない。偉いと思う。私なんて、しょっちゅうブレて皆に批判されてるのに。
長い間、議員をやっていたが、今は浪人だ。もったいない。こういう真面目で、一貫した人が政治の場で頑張ってほしい。小林さんは政治への熱い想いを語ってくれた。
二次会でも、皆で大いに語り合った。
荒俣宏の『帝都物語』(角川書店)は全11巻を再度読んだ。いい本だ。
ところが、図書館には、『新帝都物語』という本があった。エッ、さらに続編があったのか。借りてきて読んでるが、もの凄く厚い。長い。でも面白い。
来月は高木さんと『帝都物語』について対談するんだから、これも読まなくっちゃ。図書館の帰り、中野の喫茶店で、長居をして本を読む。
帰ってきて、仕事。
午後4時、代官山のライブハウス「晴れたら空に豆まいて」。これから、外国の人も呼んでイベントをやるというので。そのお披露目を兼ねて、招待パーティ。
桃井メロンさんが主宰し、椎野レーニンさんもいた。私は見学。
終わって、レーニンさんと新宿へ。蓮池透さんと合流し、ラーメンを食べる。
そのあと、ロフトラジオに出る。平野さんが司会で、毎週、やっている。面白い。私も何回か出た。今日は、蓮池さんがメインで、私も話した。終わって、皆で食事に行く。
原田さんは、この映画にも出ている。自分の弟を殺されながら、犯人と面会を続け、「死刑は解決にならない」と思い、「死刑反対運動」に参加する。とてもできないことだ。
私は何度か原田さんと対談している。又、光市事件や他の少年犯罪の容疑者や犯人たちにも、一緒に面会に行った。とてもこんな心境にはなれないし、こんな活動はできない。
私は原田さんの中に〈神〉を見た。又、〈神〉になった人間の苦悩を見た。そんな話をした。
終わって、皆と外で食事した。知り合いの人たちも沢山、来てくれたので、夜、遅くまで話し合い、飲んだ。
夜は、大阪のホテルに泊まった。